スコッチ・ウイスキーの知識
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シングル・モルト・ウイスキーの主要銘柄
シングル・モルト・ウイスキーは蒸留所で産出されるため、「蒸留所名」はしばしばシングル・モルト・ウイスキーの銘柄と同意に扱われる。ここでも同様に、シングル・モルト・ウイスキーの銘柄として蒸留所を記述する。
蒸留所の地域別分布
スコットランドには、100を越える蒸留所があり、おおむねハイランド (''Highlands'') 、スペイサイド(''Speyside''、ハイランド地方の中でも特に、スペイ川流域の蒸留所が密集している地域をいう)、アイラ島|アイラ (''Islay'') 、アイランズ (''Islands'') 、キャンベルタウン (''Campbeltown'') 、ローランド地方|ロウランド (''Lowlands'') の地域別に分かれ、製法や香りなどにその地域・蒸留所の特色がある。その8割はハイランド(スペイサイドを含む)地方にある。ハイランド地区
ダンディー_(イギリス)|ダンディー (''Dundee'') - グリーノック (''Greenock'')間の想定線以北がハイランド、以南がロウランドに分けられる。蒸留所はおよそ40箇所。範囲が広く、蒸留所の特徴も多岐にわたる。ハイランドは範囲が広いため更に4地区に分類して考えると便利である。
北ハイランド
: 1819年に創立された。1967年に新しい蒸溜所を作り、移っている。古い蒸溜所ではブローラという銘柄で製造をしていたが、1983年に閉鎖された。ジョニー・ウォーカーの原酒で、どっしりとした味わいが魅力。
: 金色の鹿が印象的なボトル。古典的な食後酒として知られている。
: 標高326m、スコットランドで最も高所にある蒸溜所。穏やかな味わいで、スコッチ・ウイスキー初心者にも飲みやすい。ブラック&ホワイトのブレンドに用いられている。
: シングル・モルトに徹した銘柄で、ブレンド用には一切供給されていない。背の高いポット・スチルを用いることで軽く仕上げた原酒をバーボン樽で熟成させることで華やかな香りが生まれる。スコットランドで最も飲まれているシングル・モルトである。
東ハイランド
: ハイランドとスペイサイドの境界に位置する。100%シェリー樽にこだわった熟成を行っている。ティーチャーズのメイン原酒である。
: 1845年創業。その3年後にすぐ近くのバルモラル城を英国王室が購入し夏の居城とした。蒸溜所のオーナーがヴィクトリア (イギリス女王)|ヴィクトリア宛の招待状を送ったところ、その翌日女王一家が蒸溜所を訪れた。以来、女王の夫アルバート (ザクセン=コーブルク=ゴータ公子)|アルバート公の愛飲するところとなり、王室御用達を示す「ロイヤル」の称号を得た。
南ハイランド
: スコッチ・ウイスキー蒸溜所中最も小さな蒸溜所。蒸溜用のポット・スチルは、この蒸溜所のものが最小の基準となっており、これより小さいものは法律で禁止されている。1週間の生産量は600ガロン、ボトル3,600本程度。シングル・モルトとして出荷されるのはさらにその10%ほど(年間24,000本)しかない。
: ロウランドとの境界に位置する。ピートを全く焚かない製造法で軽くフルーティーなウィスキーである。
: 1717年にすでにこの地でウィスキーが作られていた記録があり、これを引き継いだとして、最も古い蒸溜所だと主張している。創業は、ストラスアイラやリトルミルの方が古い。ギネスブックにも登録された世界一たくさんのネズミを捕ったネコ「タウザー (猫)|タウザー」はこの蒸溜所の番猫だった。
西ハイランド
: アイラ島はじめヘブリディーズ諸島への船が発着する港町に位置する。蒸気機関車で有名なスティーブンソン一家が創設した蒸溜所である。ハイランドとアイラ・モルトの中間のような性格。
画像:Oban_distillery.jpg|オーバン蒸溜所
スペイサイド地区
ハイランド地区のスペイ川流域およびその周辺には、全蒸留所の半数近い、およそ50の蒸留所が集中している。名酒といわれる銘柄も多く、なかでもグレンリヴェットはモルト・ウイスキーの代名詞的存在。この地区もさらに細分される。
エルギン地区
: 華やかでバランスのとれた香り、味わいを持つ酒。1936年に責任者として雇われたロデリック・マッケンジーが、味が変わるのをおそれて、蜘蛛の巣を払うことさえ禁じたというのは有名なエピソードである。
: どっしりとした深い味わいを持つ酒で、ブレンダーの間ではマッカランやグレンリヴェットに並ぶ評価を得ている。
キース地区
: 1786年創業のスペイサイドおよびハイランド北部で最も古い蒸溜所である。13世紀にはドミニク派の修道僧がここでビールの醸造を行っていたという記録がある。仕込み水に泉の水を使っているが、この泉には「水の精」が棲んでいるという伝説がある。シーヴァス・リーガルのメイン・モルトである。
画像:Strathisla_Distillery_1.jpg|ストラスアイラ蒸溜所
ローゼス地区
: 5年ものから40年ものまで、多彩なボトルを販売している。初めてシングル・モルトとして発売され、スコットランド以外に流通した銘柄でもある。世界第2位の売り上げを誇るシングル・モルト・ウイスキーである。
ダフタウン地区
: グレンフィディック蒸溜所の創業5年後に隣接した敷地に創業され、仕込み水や大麦を共有する姉妹蒸溜所である。熟成には様々な樽を用いており、熟成の違いを楽しむことができる。
: 1887年の創業。1906年にシングル・モルトを世界に紹介し、一躍その名を知らしめた。世界シェア30%と、最も多く販売されているシングル・モルト・ウイスキーである。
画像:Glenfiddich_Distillery.jpg|グレンフィディック蒸溜所
リベット地区
: ハイランド地方で最初の公認蒸溜所となり、密造酒時代に終止符を打つ契機となった蒸溜所で、スペイサイドを代表する蒸溜所である。19世紀後半には便乗で「グレンリヴェット」を名乗る偽物が横行し、訴訟沙汰となり、本家のみが「The」の使用を許可され、現在の名称となった。現在でもアメリカでは最も飲まれているシングル・モルトである。
画像:The_Glenlivet_Distillery.JPG|グレンリヴェット蒸溜所
スペイ川中下流地区
: 1986年に国際ワイン&スピリッツ大会で金賞を受賞した。この時、創業時に使っていた涸れ井戸に一時的に水が湧いたとか、かつての熟成庫主任が熟成樽でバグパイプを聴かせてウィスキーを寝かせていたなどというエピソードを持つ。後味の滑らかな銘酒である。
: 創業者ジョン・スミスはマッカランやグレンファークラスといった蒸溜所のマネージャーを歴任した人物で、自らの理想のモルトを創り上げるべく創業したのがこの蒸溜所である。豊かな香りと深い味わいを持つモルトである。オールド・パーの主要モルトとなっている。
: シェリー樽にこだわった熟成を行っている。マーガレット・サッチャー|サッチャー元首相はこの蒸留酒の若い酒をヴァッティングした105プルーフ(アルコール分50%以上)のウイスキーを愛飲していた。
: J&Bの原酒。この酒には、何年もの、という表示がない。熟成が完了したと判断された樽から順番に瓶詰めされ、ラベルには蒸溜年と瓶詰め年が記載される。熟成期間はおおよそ12年から15年程度が多いという。
: 数多くのコンクールで優勝し、芸術品とまで讃えられた銘酒である。シェリーの中でもドライ・オロロソの樽しか使用しないという徹底した酒造りを行っていることでも知られる。1960年代まではスペイサイドの外では手に入らず、希少価値もあって熱狂的なファンを生んだ。ハリウッドの脚本家アンラン・シュイアックがオーナーであった時代に積極的な広告戦略を展開し、大きな成功を収め、今や、シングル・モルトを代表する最も著名な銘柄の一つとなっている。
画像:Aberlour_Distillery_2.JPG|アベラワー蒸溜所
アイランズ地区
オークニー諸島|オークニー島、スカイ島、マル島、ジュラ島、アラン島_(スコットランド)|アラン島に所在する蒸留所。かつてはハイランド地区に含まれていたが、「島のモルト」という意味でアイランズ・モルトと分類されるようになった。蒸留所は6つ。それぞれ個性が異なり、共通した特徴は見出し難い。: 北緯59度、オークニー諸島の中心地カークウォール、最も北に位置するスコッチ・ウイスキーの蒸溜所である。スモーキーで麦芽風味が豊かな酒で最もオールラウンダーなウィスキーと讃えられる。
: ジュラ島はアイラ島の北東部にある島で、岩石でできた島であるため、仕込み水にもピートの香りはほとんどしない。できあがったウィスキーも軽く繊細な味わいである。
: ハイランドパーク蒸溜所よりわずかに南にある蒸溜所。バーボン樽で熟成させているのが特徴。麦芽にピートを焚き込まないことでも知られる。バランタインの主要モルトである。
: インナー・ヘブリーデス諸島最大のスカイ島に位置する。「舌の上で爆発する」と形容される強烈な刺激と後味が印象的な個性的な酒である。『宝島』の著者ロバート・ルイス・スチーブンソン|スチーブンソンはこのウィスキーを愛飲していた。
: アラン島はグラスゴーの西、クライド湾の中心に浮かぶ島。160年ぶりに復活したアラン島の蒸留所は、最新設備にも関わらず伝統的な手作業を重んじている。極少量生産のハイクオリティーなモルトは、熟成年数の若さを感じさせない完成度。ノンピートで花のよう。いくぶんスパイシーで余韻が長く、バランスが良いのが特徴である。
: スカイ島とジュラ島の中間にあるマル島の蒸留所。『トバモリー』とはゲール語で『メアリーの井戸』の意。創業は1798年であり、休業・操業を繰り返した後、1993年にバーン・スチュワート社が買収・操業を再開させた。バーン・スチュワート社が買収するまでは、主にヴァッテッドモルトとして市場に出回っていたが、買収後にはシングルモルトに重点を置くようになった。また、レダイグ(''Ledaig'')というモルトもオフィシャルボトルとして販売しており、トバモリーがピートを炊かないのに対し、レダイグは麦芽にピートを炊き込んでいる。
画像:Talisker_Distillery.jpg|タリスカー蒸溜所
アイラ地区
Islayはアイレイと読まれる場合もあるが、正しくはアイラ。インナー・ヘブリーデス諸島の最南端、アイラ島にある9つの蒸留所(ただしうち1つは2005年現在閉鎖中で在庫が流通しているのみ。もう1つは2005年にオープンし初蒸留を行った新しい蒸留所でありこの蒸留所のウイスキーはまだ出回っていない。)で作られるモルトをいう。蒸留所は海岸沿いに建っており、モルトは「潮の香り」がするといわれる。スモーキーで独特のピート(泥炭)香をもつ。: 麦芽に焚き込むピートの濃度はアイラ島でも最も高く(50-55ppm)、スモーキーでピート香も強いが、蒸溜釜に取り付けられている再留器の働きによりフローラルな香りも付加され、高い評価を得ている。一時休業していたが1997年に操業を再開した。
: ピートの香りとシェリー樽の香りとがバランスよく香り、食後酒に最適の酒である。ピート香とスモーキーさが強調されるアイラ・モルトの中にあって、バランスの良さ、多彩な風味で評価が高い。
: 食前酒向きの軽い仕上がりのウィスキーであるが、ピートを強めに焚いたモルトの試作など新しい試みにも挑戦している。
: エジンバラのスコッチ・ウィスキー・ヘリテージ・センターの土産物コーナーで最もよく売れるウィスキーだという。麦芽にピートを炊き込まないため、アイラ・モルトの中では最も軽い仕上がりの酒である。ジョージ・H・W・ブッシュ|ジョージ・ブッシュ(父)が愛飲しており、彼が大統領であった頃は、ホワイトハウスのパーティでは必ず飲まれたという。カティーサークの原酒の一つ。
: ピート香と舌に残る辛みが印象的な酒。1974年に施設が新しくなり、アイラ島で最大の生産量を持つ。主にジョニー・ウォーカーなどのブレンド用に使われており、かつては入手が難しかったが1989年にオフィシャル・ボトルが発売され出回るようになった。
: アイラ特有の深いピート香とスモーキーさを持つ一方、その滑らかな風味で多くのファンを持つ。ホワイト・ホースの主要モルトとなっている。シングル・モルトとしては16年ものが主流。
: 全モルト中、最も個性的と呼ばれるモルトである。「消毒薬のようだ」と揶揄されるほどに強烈なスモーキーなピート香は好悪の分かれるところとなる。ラフロイグ蒸溜所がピートを切り出している場所は大量の苔を含んでおり、これが独特の風味、ヨウ素|ヨード臭を生むと言われている。
画像:Bruichladdich_Distillery.jpg|ブルイックラディ蒸溜所
画像:Bunnahabhain_Distillery.jpg|ブナハーベン蒸溜所
キャンベルタウン地区
キンタイア半島の先端、キャンベルタウンで作られるモルト。20世紀初頭には30を超える蒸留所があったが、現在は2箇所のみとなっている。禁酒時代のアメリカに向け粗悪濫造のウイスキーを密輸し、禁酒法が解除になった際に見向きもされなくなったのが大きな原因とされている『スコッチ・モルト・ウィスキー』p.28。: 1835年創業。1930年代に閉鎖に追い込まれ、その後再開と閉鎖を繰り返している。2000年以降はスプリングバンクの蒸溜所を不定期にリースして操業している。
: 1983年のタイムズ誌主催の試飲会で一位になったのがスプリングバンクの12年ものであった。同じ施設で別ブランドであるロングロウ(''Longrow'')(ピートの焚き込み時間が全シングルモルト中最長)、ヘーゼルバーン(''Hazelburn'')(3回蒸溜)という異なるタイプのモルトを製造している。
ロウランド地区
スコットランドの南側で作られるモルト。かつては多くの蒸留所があったが、ほとんどが閉鎖や休業に追い込まれ、現在残った8つの蒸留所のうち、3箇所でしか操業していない。他の地区の2回蒸留に対し3回蒸留を伝統としていたが、2005年現在3回蒸溜を行っているのはオーヘントッシャンのみ。: ロウランドの伝統であった3回蒸溜を守り続ける唯一の蒸溜所である。バランタインの原酒の1つである。
: スコットランド最南端の蒸溜所。1817年に農閑期の副業として創業し、1938年から1956年まで閉鎖された。再開後もたびたび閉鎖の危機にさらされ続け、現在も不定期に細々と操業している。蒸溜所の敷地を開放し、一部をホールに改造して観光客誘致に取り組んでいる。
: エディンバラの南東15マイルに位置する蒸留所。創業は1837年だが1853年に一度閉鎖されている。1880年に再開され、以降、ロウランドを代表する蒸留所として名を連ねる。その飲みやすい口当たりからモルト初心者からも人気がある。
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